貯蓄目的で利用される生命保険商品には、満期金や年金が受け取れる「養老保険」や「学資保険」、「個人年金保険」などのほか、満期保険金はないが保険料の支払いを続けた後に中途解約した場合にはまとまった金額の解約返戻金が受け取れる「終身保険」などがあります。
保険商品の貯蓄目的での利用を検討するなら、まず、いつ使いたいお金なのか、いくらの保険料をどれくらいの期間、払い続けられそうかなどをはっきりさせましょう。ほとんどの保険商品は、短期で中途解約した場合、払った保険料よりも少ない解約返戻金しか戻らないので、短期の運用には向きません。
長く保険料を払い続けるのが難しいなら、元本割れすることのない預貯金での積み立てのほうがよいでしょう。預貯金の場合は、中途解約すると契約していた利息よりも少ない利息しか得られなくなりますが、元本割れすることはありません。一時的に資金が必要になった場合にも、預金なら容易に引き出せますし、積立額を減らして積立を続けることもできます。
一方、保険の場合は「中途解約するともったいないから保険料払い込みを続けよう」と思える、心理的な効果が期待できます。保険で貯めるなら、「頑張れば続けられる」金額の範囲内で保険料を考えましょう。
貯蓄目的で利用したい保険商品が見つかったら、保険会社のHPで試算するなど、、払込保険料に対して得られる金額を確かめましょう。
保険商品の場合、お金の増え方は、「返戻率」で示されます。返戻率とはその保険から受け取れるお金(満期保険金や解約返戻金等)を払込保険料総額で割り、%表示したもののことです。同じような%表示でも、預貯金などの「利率」や「利回り」とは異なります
したがって、ほかの金融商品と比較するなら、保険商品の「利回り」はどれくらいになるか、あるいは、預金の「返戻率」はどれくらいになるか計算してみて、同じ条件で比べるようにしましょう。
たとえば、総支払額が100万円、運用期間10年、満期時の受取金額が103万円(10年分の利益は3万円)の金融商品の場合は、
・返戻率:103万円÷100万円×100=103%
・利回り:(103万円-100万円)÷10年÷100万円×100=0.3%
となります。
ほかの金融商品に比べて有利な運用ができることが確認できたら、その商品についてさらに情報を集めます。中途解約時には元本以上の金額が受け取れるのか、どのような手続きが必要なのか等、ほかの金融商品より有利な点、注意すべき点を確認しておきましょう。
また、保険を利用するなら、「生命保険料控除」が適用できれば節税になります。生命保険料控除とは、生命保険料や個人年金保険料を支払った場合、所得税や住民税を計算するときに一定額を所得から差し引くことができる制度で、その分、納めるべき所得税や住民税が少なくなります。ただし、控除できる金額には上限があるので、加入中の生命保険で控除枠がいっぱいであれば、生命保険料控除は受けられません。
このように、生命保険は貯蓄目的で利用することもできますが、利用の仕方によっては預貯金などより有利になるとは限りません。さまざまな条件で試算し、ほかの金融商品とも比較して、有利な条件で利用できるかどうかを確かめた上で利用を検討してください。
大林香世 ファイナンシャル・プランナー
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP(R)認定者
ライフプランから見て無理のない住宅購入計画やローンプラン、保険や相続、資産運用などの相談支援業務を行っている。各種セミナー講師、新聞・Webサイト等へのコラム執筆でも活動中。
【参照記事】https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-1075/
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