――使い始めてからは、どのくらいの間隔で掃除をすればよいのでしょうか?
浅野:2週間前後に1回、網の目詰まりをチェックして下さい。目詰まりがあると通常運転より強い力を使って風を吸い込むことになり、無駄な電気代がかかってしまいます。衛生面から考えても、定期的な掃除が必須ですね。
――最近は、フィルターお掃除機能付きエアコンを利用している方も多いと思いますが、そういった機種の場合は掃除をしなくても大丈夫ですか?
浅野:そういったエアコンは一部商品を除き、フィルターの下部にプラスチック製のゴミ箱が設置されています。掃除したごみが溜まっていますので、定期的に捨てないと中がパンパンに詰まってしまいます。年に1~2回、節目のタイミングに、ゴミ箱をチェックすることをお薦めします。
ちなみに、「お掃除機能付き」という言葉から、エアコン内部までピカピカになっているイメージをお持ちのお客様が多いのですが、あくまでフィルターの汚れを落とす機能です。業者に頼むような、内部のカビを除去する機能はありませんので注意して下さい。
――お掃除機能の有無に関わらず、フィルター以外の汚れを落とすにはどうしたらいいですか?
浅野:フィルター以外のお掃除は、プロに任せた方がいいと思います。市販のスプレー式洗浄剤を利用する方も多いと思いますが、うっかり基盤部分に噴射してしまうと故障してしまいますし、故障のリスクを抜きに考えても、素人がエアコン内部まで汚れを落とすのは難しいですね。プロは高圧洗浄機を使って奥まできれいにしてくれますから、掃除を一度見ると「自分でやるのは難しい」とすぐに分かりますよ。
――プロに掃除を頼むとなると、少しハードルが高いように感じます。ビックカメラでもエアコンの分解洗浄サービスを紹介しているそうですが、利用者は多いのでしょうか?
浅野:エアコンを5~10年ほど使い、内部の汚れが気になってきたタイミングで、プロに掃除を頼んでもうしばらく使い続けるか、買い替えるかを悩まれるお客様が多いです。
――ところで、「24時間エアコンをつけたままの方が、電気代がお得」といった話をたまに聞くのですが、それは本当ですか?
浅野:はい、どのエアコンを使ってもお得だと思います。例えば、14~18畳程度のリビングでエアコンのスイッチを入れると、1000Wを優に超える電力を消費します。エアコンをつけてから冷えるまでにかかる電気代は、500Wの電子レンジ5台分にも相当します。その一方で、冷えた状態をキープすることに関してはほとんど電気代がかからないんです。
――帰宅直後、あまりの暑さに低い温度設定で急速に冷やしてしまうことが多いのですが、電気代が嵩んでいたのでしょうか?
浅野:そうですね。室内を急速に冷やそうとすると、フルパワーで電力を使い続けます。それよりは、始めから適温に設定してつけ続けた方がいいですね。エアコンのパワーがある高性能な商品を選べば、はじめから適温の設定でも快適ですよ。
――限りある予算の中で購入しようとすると、リビング以外のエアコンは安いもので…と考えてしまいます(笑)
浅野:普段接客をしていても、リビングにはパワーのある高性能機種を選び、寝室などは安価な機種を選ばれるお客様が非常に多いです。安価な機種と高性能機種の主な違いは、パワーです。自動車に例えると分かりやすいと思いますが、時速100kmを出そうとした時、3000ccのエンジンなら余裕ですが、軽自動車のような小さなエンジンですと、かなり必死にアクセルを踏まなければなりませんよね(笑)。どちらの効率がよく、壊れにくいか、すぐに想像がつくと思います。
――とても分かりやすい例えですね! 高性能機種の方が初期費用はかかりますが、ランニングコストを考えると安いと考えてよいですか?
浅野:まさしく、その通りです。ランニングコストだけでなく、パワーが異なるので快適性にも差が出ます。「エアコンがなかなか効かない」という相談をよく受けるのですが、そのほとんどが安価な機種を設置しているケースです。戸建ての場合、2・3階や吹き抜けがある部屋は冷えにくいので、実際の畳数よりワンサイズ広めのタイプを設置しないとエアコンの効きが悪いと感じるでしょう。高性能機種の場合は、記載の畳数通りで大丈夫です。
――なるほど。高性能機種を買うメリットは理解しましたが、エアコンを買い替えたばかりで、高性能エアコンをすぐに用意できない方も多いと思います。何かできることはありませんか?
浅野:エアコンは、室内の熱を室外に放出することで室内を冷やします。熱を放出する室外機が熱くなっていると運転効率が落ち、電気代もかかります。そこで、室外機に直射日光が当たらないようにしてはいかがでしょう。ホームセンターなどで室外機カバーを購入し、屋根を作って日陰にするだけで、パワーが弱いエアコンの場合は大きな効果を感じると思います。
――エアコンを効かせるために、サーキュレーターとダブル使いをする方も多いですよね。
浅野:風があると、体感温度として実際よりも涼しく感じます。温度設定を27℃程度に設定していると、エアコンだけでは少し暑く感じるはずです。サーキュレーターの風が加わると、少々高めの温度でも快適になりますよ。
――体感温度を下げる対策として、除湿(ドライ)機能を使う方もいらっしゃいますが、電気代がかかるという噂を耳にしました。
浅野:科学の授業のような話になりますが、コップに冷たい水を入れると、水滴がつきますよね。除湿とは、この水滴を拭き取るような原理です。空気に含む水分を結露させ、ドレン管を通して逃がしています。結露させるために、冷房で空気を冷やすのです。
――空気を冷やす…。もしかして、冷房をつけるだけで除湿になるのでは?
浅野:その通りです。多くのメーカーが、「再熱除湿」で除湿を行っていますが、除湿のために冷房で温度を下げて、その分だけ暖房で温度を上げています。とても快適ではあるのですが、冷房よりも暖房の方が電気代はかかりますので、コストパフォーマンスとしてはあまりよくないですね。
最近は、暖房を使わない除湿方法を採用しているメーカーもあります。除湿を使うことが多い方は、購入時に除湿方式もチェックしてみて下さい。
――なるほど、エアコン選びの重要性が、少し分かった気がします。メーカーによる特徴はあるのでしょうか?
浅野:人気メーカーの特徴は大きく分けて、2通りに分類されます。ダイキンや富士通ゼネラル、シャープの製品は、気流を上手く循環させるタイプ。室内の温度にムラができにくい特徴があります。一方、三菱電機やパナソニック、日立の製品は、人がいる場所を感知して集中的に冷やします。前者は女性や小さなお子様がいる家庭に人気で、後者は男性に人気がありますね。
――すごく、分かるような気がします(笑)。次にエアコンを購入する際には、機種の違いに悩まず買えそうです!
※エアコンの価格は2017年5月24日時点のものです。現在の価格は店舗にお問い合わせください。
斎藤若菜 住宅ライター
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。
【引用元記事】https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-1051/
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