住宅ローンの審査で最も重視されるのは、やはり「きちんと貸したお金を返済できるだけの安定した収入があるか」、「返済できなくなった場合にきちんと資金を回収できるだけの担保価値が物件にあるか」という点です。
したがって、もちろん金融機関によってはある程度審査の参考にしているかもしれませんが、母子家庭であることは住宅ローン審査には関係ありません。
実際に、住宅金融支援機構が行った民間金融機関の住宅ローン貸出動向調査によると、「最近重視度は増していると考えられる審査項目」の上位には収入に関連する項目や担保評価に関する項目が目立っています。
<最近、重視度が増していると考えられる審査項目の上位>
返済負担率(毎月返済額/月収):61.3%
職種、勤務先、雇用形態:48.0%
借入者の社会属性:30.7%
借入比率(借入額/担保価値):30.3%
※住宅金融支援機構「民間住宅ローンの貸出動向調査 平成28年度」より
この中でも特に重視されているのが、「返済負担率」と「職種・勤務先・雇用形態」です。つまり、母子家庭なのかどうかということよりも、“借入額が妥当か”、“安定した収入がある職業についているか”という点が大切ということです。これは、父子家庭でも独身男性や女性でも同じですね。
母子家庭の方で収入面に不安がある方は、まず、金融機関で重視される「返済比率」をきちんと満たすように住宅の予算を考える必要があります。
返済負担率を計算する際の金利は金融機関や金利タイプでも異なります。一般的に【フラット35】など全期間固定金利型の場合には適用金利、変動金利型や固定期間選択型は3~4%程度で計算されるため、その分、借入可能金額が少なくなりますので注意が必要です。
また、教育ローンや自動車ローンなどその他のローンがある場合には、それらの返済額も含めた総返済負担率が収入基準を満たしている必要があるので、借入を整理してから住宅を購入することも要検討ですね。
ちなみに、正社員ではなく契約社員やパート社員の場合には、審査のハードルが高くなります。金融機関には、「安定した収入があって勤続年数を3年以上」を借り入れ条件とするところも多いので、3年以上勤務したという実績を積んでから申込申し込みる、親からの援助も最大限に活用してなるべく頭金を多く入れて借入金額を抑える、などの工夫も考えましょう。
参考記事:住宅ローンの適正な返済比率は? “借りられる金額”と“借りていい金額”はどう違う?https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-0868/
母子家庭の場合には、配偶者との収入合算が使えないので、本人の収入が少ないと希望の金額が借りられないケースもあります。そんな場合には、親と同居することを前提として、一緒にローンを組むこともひとつの考え方です。
例えば、親子リレー返済ローンでは、親子で住宅ローンを同時に返済してくのではなく、親子の年収を利用して、初めは親が返済して、その後を子が返済を引き継ぐというように、親子の年収を利用して時間をずらして返済していきます。ただし、どこの金融機関でも取り扱っているわけではないので、要チェックです。
また、収入要件でなかなか希望の金額が借りられないケースでは、全期間固定金利型の商品や【フラット35】を活用するのも一つの方法です。返済負担率のところでも取り上げましたが、返済負担率を計算する際の「審査金利」は一般的に【フラット35】など全期間固定金利型の方が低い金利となっているので、その分、借入可能金額が多くなる可能性が高いです。希望金額が借りられなかった場合には、検討の余地があるでしょう。
最近では、女性が住宅ローンを借りる際には、金利を優遇したり、家事サービスがついていたり、疾病保障などの保険料が安いなど、特典をつけている商品もたくさんあります。
それらも含めて総合的に有利な商品を選ぶことも忘れずに!
金子千春 ファイナンシャル・プランナー
千春コンサルティング事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級ファイナンシャル技能士、宅地建物取引主任者、住宅ローンアドバイザー
新生銀行を経て2004年より独立。ライフプランや住宅ローンセミナー、個別相談、宅建講師、企業の従業員向け投資教育、小中学校や児童館での金銭教育など、「知らないで損をする」ことのないようにという観点から、講師や執筆を中心に活動中。
【引用元記事】
https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-0990/
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