日本ではまだ認知度が低い「IGF-1」という体内分泌物があります。このIGF-1は「インシュリン様成長因子-1」と呼ばれる増殖因子で、名前の通りインシュリンにとてもよく似た構造を持っています。人間の代謝や成長に関わる「成長ホルモン」のほとんどは、このIGF-1を介したもので、30~40歳代では50%、60歳を過ぎる頃には30%まで減少してしまいます。近年、このIGF-1が持つ筋疾患や加齢、筋合成などに対する作用に注目が集まっています。
このIGF-1には体全体の細胞増殖を促進する効果があり、毛根を活性化させる上でも必要なものであることがわかってきています。そして、ショウガに含まれるある成分がIGF-1を増加させ、抜け毛を抑制する効果があるというのです。
ショウガを加熱もしくは乾燥させると、辛みの主成分であるショウガオールが産生されますが、これが、脱け毛の抑制に効果を発揮します。このショウガオールを摂取することで、神経細胞・知覚ニューロン内の受容体を刺激。そして、刺激された知覚ニューロンが生成したCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)がIGF-1を増やして頭皮や全身へ作用し、頭皮の毛母細胞が増殖し発毛を促す、というメカニズムのようです。
生のショウガにはジンゲロールという成分が含まれており、ジンゲロールには発汗作用や解熱、殺菌、咳止めといった効果があります。そして100度以下の温度で4~5時間加熱あるいは乾燥させると、ショウガの中のジンゲロールが分解され、ショウガオールに生成されるのです。そのため、ショウガを摂取する際には、加熱調理をするか、乾燥させたものを使うのがよいでしょう。
また、IGF-1の産生を促す成分としては他にも、唐辛子に含まれるカプサイシンや、豆腐に含まれるイソフラボンなどがあります。ショウガを利用した料理には、豆腐や唐辛子を使ったメニューを考えてみるのもよいかもしれません。全身のIGF-1が増加すれば、育毛・発毛の他に美肌や高血圧改善、免疫力の向上やうつ症状の改善などにも効果があるので、加齢とともに低下するIGF-1を促す成分は積極的に摂りたいところです。
ここまで、ショウガを摂取することで得られる効果をみてきましたが、いかがだったでしょうか。手軽な方法としては、加熱したショウガの絞り汁を野菜ジュースやお茶などに混ぜて摂ることもできます。また、ショウガの絞り汁をガーゼなどで漉し、薄めたもので頭皮をマッサージするという方法もあります。消毒用エタノールで薄めたショウガトニックなどが効果的でしょう。積極的にショウガを摂って、健康な髪と体をキープしましょう。
【栄養士ライター】スズキ
栄養士養成施設を卒業後、栄養士の資格を取得し食品会社に勤務。食品会社を退職後は、自宅で料理教室を開き栄養学上正しい料理を広めています。現在は料理教室の運営の傍らタウン誌などで記事を執筆するなど、フードライターとして執筆を中心とした活動も行っています。
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