猫感染症研究会が2008年に行った全国調査では、外出する猫1770匹のうち、猫エイズ陽性率は23%だったそうです。猫エイズとは正式名を「猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症」といい、今のところ完治不可能な感染症です。
この病気が最初に発見されたのは1986年。感染すると、一般的に感染後約1ヶ月後に風邪、下痢、リンパ節が腫れるといった症状が現れ、だいたいこうした軽い症状が1ヶ月~1年くらい続きます。
この時期が終わると、急性期に見られた症状が一旦影を潜め、無症状キャリア期と呼ばれる期間に移行します。文字通り何も症状が出ないため、飼い主も気づかない場合が多い時期です。しかし完治したわけではありません。この期間にも猫エイズウイルスは猫の体内でリンパ球を破壊し、次第に体内の免疫力を奪っていきます。無症状キャリア期は通常4~5年、猫によっては10年以上続きます。
そしてこの時期が過ぎるとエイズがいよいよ発症します。約半数の猫に歯肉、歯周組織などの炎症や細菌感染、そして体重減少、嘔吐、下痢、風邪や皮膚炎など、さらに免疫力が弱まると肺炎や癌と言った重篤な病気が引き起こされます。
猫エイズの感染源は、主に唾液です。しかしグルーミング程度の唾液で感染することはありません。ほとんどは喧嘩で肉に達するほどの深いかみ傷などから感染することが多いと言われています。
交尾のときにオスがメスの首を噛むことで感染する場合もあります。その場合、生まれて来る仔猫にも感染しています。
猫エイズになったからといって、猫エイズウイルス自体の感染力は非常に弱いのでそんなに不安になる必要はありません。
猫同士のグルーミング、授乳、食器の共用などによって感染するということはまずありませんし、風邪のように空気感染することもありません。
猫エイズは人間のエイズウイルスと同じ「レトロウイルス科レンチウイルス属」に分類される感染症ですが、犬や人に感染することはありませんので安心してください。
それでは猫エイズにかからないための対策はあるのでしょうか?あります。それは猫エイズワクチン。このワクチンについては後編で説明しましょう。
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