上流階級の歪んだ欲望を描いたドラマは、庶民の大好物。醜い言動を見て「お金持ちなのに下品ね」とニヤっとしたり、「やっぱり汚いことをしてるんだ」と呆れたり。野次馬根性でセレブたちのゴタゴタを楽しむ側面があります。
かけ離れた世界の話ですが、このドラマは庶民にも理解できる心情が少なからずあり、感情移入できるのが面白いところ。
人生選択の後悔、子どもに良い人生を与えたいと願う気持ち、親の愛情を求める姿など、共感できる部分があり、ぐっと引き込まれてしまいます。憎たらしい登場人物だらけなのに憎みきれず、複雑な気分になるんですよね。
彼らの人生は理解できないけど感情の一部は理解でき、その後の行動が気になってしまうのです。
ストーリーの中心は転落事件の真相解明と復讐劇です。ネタとしてはありきたりだけど、ストーリー展開は毎回予想を上回り、ベタな復讐ミステリーとはひと味もふた味も違いました。
嘘、裏切り、暴露、新たな登場人物、あっさり消えるキーパーソンなど、1つのドラマに惜しげもなく大どんでん返しを入れてくるのです。しかもそれを長々と引きずらないところがすごい。
予測不能な展開に、私は翻弄されっぱなし。
思わせぶりな伏線を引っ張るだけ引っ張っておいて、大したオチがない!話が遅々として進まない!そんなイライラとは無縁で、流し見ができません。その結果、私は寝不足に……。
脚本家の力量に唸らされてしまいました。
欲望や野望がごった煮された「闇鍋ドラマ」ですが、ゲッソリせずに見続けられたのは、2人の母親の強い愛情が描かれていたからだと思います。
視聴者が共感しやすいのが、お金に苦労しながら一人娘を育てているユニ。権力者に人生を踏みにじられた過去を持つユニは娘に自分のような人生を歩ませないように奔走してセレブへの道を手にしますが、子を思う愛ゆえに善悪の判断を誤り、転落してしまいます。その姿にヤキモキしつつも共感できるものがあり、背筋がゾクッとするのです。
もう一人の母の財閥令嬢スリョンは、実子と血の繋がらない子の両方に愛情を抱く母性溢れる人物です。子を想い、苦しみ悩む姿に涙を誘います。
母性から復讐を企てるものの、母としての自責の念が強くあるため、どこか厭世的。スカッとする復讐劇とは違うのです。
「何があっても子供は守らないと。母親だから。母親なら子供のために何でもすべきでは?」という彼女のセリフには、彼女の決意が表れていました。
復讐しても誰も幸せになりません。でもスリョンの憎悪が母性の裏返しであることを思うと、無事に復讐を遂げてほしいと願ってしまうのです。
大人の歪みは子どもにも影響します。子ども世代のストーリーも同時進行し、物語はさらに複雑な構造に。
才能を持つ庶民のロナと、財団理事長の孫のウンビョルのライバル関係、さらにダンテの息子ソクフンが加わった三角関係の恋模様、学校のいじめ問題などが描かれ、学園ドラマのような要素も楽しむことができます。
とはいえ、彼らは親の権力によりモンスターに育ってしまったため、一筋縄ではいきません。集団暴行事件のもみ消し、成績改ざんなどのブラックな問題が潜み、先が見えない様相を呈しています。
「本当の家族だったら罪を犯しても目をつぶるものでしょ?」という子どものセリフがさらっと登場することにゾッ!歪みがさらに歪みを誘いそうで、彼らの今後が気になります。
毎回続きが気になる終わり方をしているのが、本当にズルい!どうなるのか気になって、いっき見してしまいました。
一番ズルい終わり方をしたのが、最終話です。「いやいや、そんなバカな」と言いたくなる終わり方で、シーズン2へと続くのです。
すっきりと終わってくれず、救われない人の数をひとーり、ふたーり、さんにーん……と四谷怪談のお岩さんのように数えてしまいました。
「庶民には敗北しかないの!?」と私の心はかき乱されまくり。シーズン2を見たい!でも寝不足になる!と、現在葛藤中です。
「家はその人の人格や地位を表し、権力を象徴するんです」
これはドラマで印象に残ったセリフの1つです。
権力をふりかざして勝ち抜いたヘラパレスの住人たちは、勝利の美酒に酔いしれていましたが、彼らこれからどうなっていくのでしょうか。
シーズン2・シーズン3も見始めたら止まらなくなりそう。時間を確保してドラマの世界に没頭したいと思います。
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