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持ち家VS賃貸、お得なのはどっち? メリット・デメリットを徹底比較

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持ち家VS賃貸、お得なのはどっち? メリット・デメリットを徹底比較

買うべきか、借りるべきか、それが問題だ……!
「持ち家」か「賃貸」か、住まいを考えるときの永遠のテーマとも言えるこの問題。経済的なお得度を物差しにするなら、いったいどちらに軍配があがるのでしょう? 
今日という今日は、長らく続いたこの論争にすっきり決着をつけましょう! 
不動産コンサルタントでさくら事務所創業者会長の長嶋修さんに、どちらがお得なのか、本当のところをズバリ教えていただきました。

持ち家はローン完済後の出費がないからお得、はウソ?

よく「家賃は、お金をドブに捨てているようなもの」と言われます。
何十年と賃料を払っても家は自分のものにならないのだから、同じ金額を支払うなら、資産になる持ち家のほうが得だ、という考え方です。

また、賃貸は借りている間、ずっと賃料が発生しますが、持ち家のローンは最長35年で終わります。
ローン完済後は住居費が一気になくなり、老後も安心、というわけです。

しかし、この比較は、持ち家・賃貸のある一面しか見ていないものだと言わざるを得ません

まず1点は、持ち家はマンションにしろ、一戸建てにしろ、必ず修繕費が必要になる、ということです。
外壁や屋根の修繕、ユニットバスやキッチンの取り替えなど、だいたい12〜15年に1度くらいのペースで修繕が必要になる箇所が出てくるものです。
マンションの場合は修繕積立金を充てることになりますが、戸建の場合は別途、資金をプールしておかなければなりません。
目安は、毎年建築費用の1%。つまり2000万円の建物であれば、毎年20万円を積み立てておく必要がある、ということです。

さらに、建物の価値は年月を経るごとに下がる、ということも想定に入れなければなりません。
一般的には、建築後25年が経つと建物の価値はゼロになる、と言われています。

そして、もうひとつ。
一般的な住宅の平均寿命は、木造、鉄筋コンクリートとともに、65年程度です。
ローンを完済したらそれで終わりとはならず、建築後45年目あたりからは建て替えの心配もしなければなりません。
建て替えや大規模なリノベーションをするとなれば、一千万円単位のお金が必要となるでしょう。

このように考えると、単純に家賃の総額と持ち家の購入金額を比較して、「持ち家は資産になるからお得」とは言えないことがわかります。

 

持ち家VS賃貸のキャッシュフローを徹底比較

下の表は、4LDK3,500万円の新築一戸建て、家賃12万円の4LDKアパート、それぞれにかかる費用をシミュレーションしたものです。

新築VS 賃貸 総費用の比較

新築一戸建て 4LDK 価格3,500万円 頭金ゼロ 諸費用150万円



 

 

※持ち家の場合は、最後に土地建物が残る(地価が変わらない場合の価値は1800万円程度。地下30%程度下落するとして1260万円)

一戸建てアパート 4LDK 家賃12万円(家賃が30年変わらない場合)



 

 

持ち家は頭金なし、フルローンで購入し、諸費用として150万円がかかったものと計算します。
賃貸アパートは、2年ごとに賃料の1カ月分の更新料がかかる見積もりです。

持ち家のローン返済額は毎月11.9万円、アパートの賃料は12万円とほとんど変わりません。
ただ、15年おきごとに修繕が必要となること、固定資産税を計算に入れると、持ち家のほうが総支払額は高くなる、という結果に。
その差はなんと620万円以上です

持ち家の場合、土地と建物は残りますが、25年の時点で建物の価値はゼロになってしまうことは前述の通り。
35年後も土地の価格が変わらない場合で資産価値は1800万円程度、仮に地価が30%下落したとするなら1260万円程度になります。

このように検証を進めると、ローン返済中は、残高が減るスピードと、住宅の資産価値が落ちていくスピードと目減り競争をしているような状態、とも考えられます。
物件価格の100パーセントローンを組んで住宅を購入する家庭の場合、返済当初は住宅の価値をローン残高が上回るケースがほとんど。
多くの場合は、ローン返済額と資産価値が釣り合うようになってくるのは、返済開始から18〜20年経ったあたりから。もしその前に売却をしたい場合は、売却価格をローン残高が上回り、その分を現金で補填する必要があります。

「マイホームは終のすみか。売ることなんてない!」「自分好みの家に住める価値はプライスレス! 資産価値なんて気にしない」と考える方もいるでしょう。
ただ、中古住宅市場に出ている物件の約25%は、築10年以内に売りに出されたもの、というデータもあります。
転勤や親との同居など、さまざまな理由から売却するケースは珍しくないのです。

未来のことは誰にもわかりません。「持ち家はいざとなったら売れる」というのはよく耳にするフレーズですが、「お金がなくて売れない!」という事態も起こり得ることは、ぜひ頭に入れておきたいポイントです。

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資産価値が落ちづらい家なら、マイホームが有利!

ここまでの比較を見てみると、費用の面では賃貸のほうが優勢のようです。
確かに「資産価値が落ちる物件を買うなら、賃貸のほうがお得」というのは間違いないところ。
ですが、マイホーム購入に軍配があがるケースもあります。

それは、価値が落ちづらい場所、資産性を保てる寿命の長い住宅を購入できた場合。
わかりやすい条件は、駅からの距離です。なんといっても駅近は圧倒的に有利!
この傾向は近年、ますます顕著になり、都心7区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・目黒・品川区)の各駅から1分離れるごとに1㎡あたりの価格が1万8,000円下がる、という調査結果も出ています。
駅近物件は資産価値が落ちないどころか上がるものがある一方で、駅から離れると極端に価値は下がってしまう。
現時点での目安として、駅から徒歩7分圏内であれば、資産価値は落ちづらいということが言えそうです

また、これまでは25年で価値がゼロになる、と言われていた建物についても、価値が落ちづらいものも出てきています。省エネ設計、適切なメンテナンスなどによって、住宅の老朽化を抑えることができれば、下落率はゆるやかになります。

 

持ち家なら、「返さなくていいお金」を借りられる?

まだあまり普及していませんが、持ち家が持つ機能として、自宅に住みながら、家を担保にして安定的・定期的に収入を得られる仕組みがあります。
自宅を担保にお金を借りられる住宅ローンの1種、「リバース・モゲージ」です最大の特徴は、生きている間は返済をしなくてよいか、あるいは利息分のみの返済でいい、という点。
自身が亡くなったあとに、金融機関が住宅を売却し、元金と利息分を回収するのです

資産を子どもや孫に残したい、という人には向きませんが、自分の資産はきれいに使い切りたい、という人にとってはぴったりの制度。
今はまだ、いくつかの金融機関でしか取り扱っていませんが、今後、リバース・モゲージは当たり前に普及していくと予想されます。

ただ、この制度は、住宅の資産価値を現金化して融資する、というものです。
同じ広さ、同じ築年数の住宅でも、資産価値の高い物件と低い物件では、利用できる金額がまったく異なります。

こうした観点からも、購入するなら価値が落ちづらい場所、寿命の長い住宅にこだわりたいもの。
持ち家は、きちんと選べば将来の安心につながる、と考えられるのです。

 

新築優遇の住宅政策に転換の兆し

一方で、賃貸住宅におけるマイナス要素も、将来的にはなくなっていくことが予想されています

賃貸への不満として挙げられるものに「広さが不十分」「設備のグレードが低い」といったものがあります。
確かに賃貸住宅といえば、1DKや2DKの単身者用や二人暮らし用の物件が圧倒的に多く、ファミリー向けの間取りを探そうとすると極端に選択肢が減ってしまう、という状況が続いてきました。

また、建物のグレードを見ても、持ち家と比較すると質が劣るものが多いのが現実です。
賃貸向けに廉価版のシステムキッチン、ユニットバス、外階段などが販売されていて、多くの賃貸物件ではグレードの低い設備を採用しているのです。

月々のローンと家賃を比較して同程度の支払いになるのであれば、持ち家のほうが広さ、設備の質ともに満足度が高い、というのがこれまでの通説でした。

こうした差が生まれた背景には、日本の住宅政策が新築の持ち家に力を入れてきたことがあります。
新築住宅、中古住宅、賃貸住宅の3つのなかで、いちばん優遇されているのは新築住宅です。
減税を含むさまざまな住宅関連予算のうち、6割以上が新築市場に投下されています。
景気をよくするために、新築購入を推進したい、という狙いが反映されたものです。

しかし、長年続いてきたこの方針は、今、転換されつつあります。
新築一辺倒から脱却し、中古住宅の流通、リフォーム市場の拡大、そして賃貸住宅の品質向上へと舵を切ろうとしているのです。

中古住宅・賃貸住宅市場にきちんと予算が配分され、整備が行われることで、将来的には持ち家と賃貸の間にあった広さやグレードの差は解消されていくはずです。
これまでは、「賃貸住まいは、持ち家を購入するまでのステップ」「賃貸より持ち家のほうがステータスがある!」という意識が根強くありましたが、今後は「所有か利用か」という違いにすぎない、といった認識へと、私たちの捉え方も変わっていくでしょう。

「高齢になると賃貸は借りづらい」「年金だけで家賃を払い続けられるか不安」といった声もよく聞かれますが、こうした不安の解消にもほとんど道筋がついてきました。
まず、この少子高齢化の時代に、「高齢者には家を貸さない」なんて言っていたら賃貸経営が成り立ちません。
むしろ、高齢者向けの賃貸住宅が充実してくるはずです。

また、私は、将来的には、賃貸住宅を借りている人には、国や自治体から家賃補助のような補助金が支給される可能性が高いと予測しています。
たとえばイギリスではすでにこういった制度があり、一般的な賃貸住宅には4〜6万円程度の補助金が支給されています。
20年後、30年後には、家賃の支払いはそれほど大きな家計負担ではなくなっている可能性が高いでしょう。

まとめ

地価が上がり続けていた経済成長時代は、持ち家のほうが有利でした。
しかし、今は、持ち家も賃貸もそれぞれにメリットがあり、単純に比較することは難しくなっています。
費用の点で賃貸が一歩リードですが、持ち家もきちんと吟味して資産価値が落ちにくい工夫をすれば、賃貸に勝るお得があります。
それに、そもそも「この地域に住み続けたい」「自分の家を持って、そこにライフスタイルに合わせてDIYで進化させていきたい!」という思いがあるのであれば、その人は持ち家を選ぶ方が良いはずです。

今の時代は、「どちらが得か」というよりも、理想のライフスタイルに合わせて、持ち家か、賃貸かを選択する時代に変わりつつある、と言えるでしょう。

 

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記事監修者

さくら事務所創業者会長 長嶋 修さん

不動産コンサルタント。1999年に業界初の個人向けの不動産コンサルティング、ホームインスペクション(住宅診断)を行う株式会社さくら事務所を創業。業界の第一人者として、テレビ出演、セミナー、講演等で不動産購入のノウハウを発信するほか、政策提言なども精力的に行う。『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)、『100年マンション』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
https://www.sakurajimusyo.com/

取材・文/浦上藍子

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