コラム

今、密かにブーム！映画『この世界の片隅に』を見るべき理由とは？

更新日：2017.10.27

『君の名は。』の記録的なヒットや『聲の形』の人気など、今年は「アニメ映画の当たり年」と言われています。
そんな中、今密かに話題になっているアニメ映画が『この世界の片隅に』です。
ネットを含めた口コミでジワジワ上映館を増やし、いまや全国の映画館で続々上映が決定している話題作です。
この映画の魅力は一体どこにあるのでしょう？　分析してみました。

【魅力その1】原作はこうの史代さんの名作マンガ『この世界の片隅に』

『この世界の片隅に』は、第13回メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した作品。広島出身のマンガ家・こうの史代さんが、実際に体験者に取材した戦争中の庶民の生活が描かれています。
この映画のスゴいのは、こうのさんのマンガをもとに、スタッフが6年もかけて時代考証やロケハンを重ねたこと。呉の山や街並みも、当時の写真を参考に正確に再現しているそうです。

【魅力その2】観たあとにジーンと心に残る、笑って泣ける映画

戦争映画というと、悲惨なシーンや悲しいシーンがたくさんあるイメージ。
でも、この映画はコミカルなシーンもたくさんあって、笑えるんです。特におっとりした主人公・「北條すず」の失敗談は微笑ましい。映画館が笑いに包まれることもたびたびです。
それだけに戦争の哀しさも伝わってきて、最後には涙を拭く人が続出。笑って泣ける、不思議な光景が全国の映画館で繰り広げられているのです。

【魅力その3】「のん」さん演じるすずが可愛い！

主人公・すずの声を演じるのは、ＮＨＫの朝ドラ『あまちゃん』でブレイクした女優の「のん」さん。
やわらかな「のん」さんの声が、広島弁に合っていて、とっても魅力的なんです。
ちょっとドジなすずは、「のん」さんのイメージにピッタリ。絵柄も可愛くて、ほんわか。
アニメ映画が苦手な人も、抵抗なく楽しめます。

【魅力その4】主人公は戦中の「暮らしニスタ」さん!　生活の工夫が愛おしい

主人公のすずは広島から呉に嫁いだ女性。戦争中のモノのない中で、さまざまな工夫を凝らして暮らしています。野草の天ぷらを作ったり、着物をほどいてもんぺにしたり。丁寧に生活と向き合うすず。
もちろん、今の私たちの生活とは雲泥の差ですが、「限られた中で工夫する」という主婦の知恵に、女性はきっと共感できるはず。さりげなくおしゃれだったりする所にも、主婦の底力を感じてしまいますね。

【魅力その5】実は夫婦の絆を感じる「夫婦愛」映画でもある

監督自身が「配偶者が欲しくなる映画です」と称していたこともあるように、実は夫婦愛の映画でもあるんです。
すずはお見合い結婚でほとんど顔も知らない夫の周作と結婚しますが、2人は少しずつ距離を縮めていき、心を通わせていきます。観た人は、ダンナさんと手をつないでみたくなるかも！

【魅力その6】みんなから愛されて生まれた映画

こうのさんの原作に、監督の片渕須直監督がほれ込み、映画化が実現した本作。
でも、当初は資金難だったために、資金の一部を「クラウドファンディング」という手法で、一般の人から集めることになりました。プロジェクトが発表されると、あっという間に目標額をオーバーし、集まった金額は国内史上最高額に。
上映後も「感動した！」「名作！」という感想が相次ぎ、3回、4回と劇場に足を運ぶリピーターもいるほどです。

丁寧に作られた映像から、いつの時代にも変わらない庶民の力強さが伝わってくる本作。すでに海外での上映も決まっているそうです。
観終わった時、あなたにとっての「この世界の片隅」が、きっとわかるはず。ぜひ、幅広い人たちに見てもらいたい作品です。

『この世界の片隅に』
テアトル新宿ほか、全国映画館で上映中
（Ｃ）こうの史代・双葉社／「この世界の片隅に」製作委員会

Profile吉田直子

元・フリー編集者。出産後は２人の男の子を育てながら、ライターとして活動。生活系の執筆のほか、書評、映画評など。近著は『キャラクターを知れば源氏がわかる！　登場人物で読む源氏物語』（KADOKAWA / 富士見書房）。

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